studio名画座

役所でこんな顔はしてないし、できん

  • 今期のおれだめトピック(という名の映画館)


1本め/実録『福祉/Welfare'05』*1


金にこまる。
年金の支払いなんか事欠く。
ので役所へ駆込み訴へ。
家人のアドヴァイス、「"無職"より優遇されるよ」を可憐に信じ
"家事手伝い"の顔をつくっておく。
小芝居を打つべきか打たざるべきか悩んだあげく
シネマ・ヴェリテ風あっさり感をみなぎらせつつ
「一度おつとめに出たんですけど(それが去年の、支払ってる月なんですけど)
もう、そうなると家のことが立ちゆかなくなってしまいオイオイ」とのせりふは
ちょっとサンテレビ橋田昼ドラテイストもふまえつつ。

戦果(=どつぼ):30までニートしてていい権(=そこまでに生活の設計をしておく義務)

しかし、実は気が小さいのかなんなのか、
まあつらなって道をふさぐ高校生がふざけておろしたズボンをやぶにらみしつつ
ちゃりのベルをならしけちらし通りすぎると後ろから
「おいあんま見んなよー」と軽口をたたかれる類いのなめられよう*2を自覚しているからか、
それにしたってどうして日本は
「生れてすいません」*3
「へこへこすんのの回避の逆ギレ」しか選択肢がない国にみえるんでしょう。
少なくともわしにはそうみえた。
『福祉』をみてるかぎり、あの国の役所にあつまる人には、
「女は生きてるだけで偉いんだから」(Byカウボーイビバップ)を軽く周回遅れにさす
「肉の塊は生きて動いてるだけで偉いんだ」感が
みなぎっていたような気がしました。
そっちがいいかネヤガワがいいかなんて単純な話じゃないけど。


2本め/実験ネオレアレスモ映画『平野の歯抜け野郎』


金沢*4があってからというもの、
なんだか人生ちょっと開けたのだろうかと思うほど
Eventful(ららららららMusic&Love……違ったな)じゃないかおれの人生との
勘違いの揺れ戻し。
どうやら去年から抱えてたくさいが
魔都にての
「朝めしくって上映室でリポD、そのまま夜の金沢」の暴挙に虫歯が爆裂。
ひねた性格にみあって完全に横におがった親知らずの抜歯、
つうか所要時間2時間半、
けずってけずってくだいてくだいてやっとこ抜けるようなひね歯の手術、
ひね歯であるがゆえ根元近くはのどまで痛め
歯ぬけフーズ(ヨーグルトやらやわこいゼリーやら)どころか
鉄くさいつばすらやっとこのみこむような術後の侘び生活。
寝ておきただけなのになぜかまくらのカバーのタオルに
血(に色づいたよだれ)のにじむこの不条理さ。
まくら血、昼寝顔、まくら血、昼寝顔……*5
……悪いやつはあきらめない。

ふたたび、
悪いやつはあきらめない、
のでわしは抜歯翌日というのに家人と母と映画としゃれこみ。
もうかってかフレッドペリーのジャージを着込む劇中のイーストウッド*6に興奮、
まだ鼻汁が館内でじるじるいいだす前から勝手に鼻たらっしでおやつこんぶを食べたりで
泣いたガキよろしく熱が出る。
だからかどうか、
いえにかえってからせっかくの中通り商店街の焼き鳥を小間物屋としてリサイクル*7
が、みたび、悪いやつはあきらめないので
抜歯1週間を記念した来週の火曜には抜糸があるという。
(『さらば平野の歯抜け野郎』につづいたりして……)


  • きょうもイミテーション銀幕

ミリオンダラー・ベイビー』(まんをじして)


例)「イーストウッドが3か月、いや半年に1本はやってくれたらなああ!」
  I wish he could shoot once over three months, no, six.
まさに例文通りの出来、
イーストウッドが神々しすぎ、
他の追随を許さないどころか
次の日みた他のBS2の映画までよくみえてまいそう*8な出来。
はすみんだろうがなんだろうが
誰がなんといっても凄まじい恋愛映画。
(注意:『ブラッド・ワーク』以来のイーストウッドの脚本の選択に入り込む、
正統派ジャンル映画というひとつの完成目標を微妙にずらしてしまっているものは
考察余地おおいにあり)
しかし、ねえちゃんとも爺とも所定時間内にちゃんと恋愛ってのは
案外イーストウッドはじめての快挙かもしれない。
なお家内では
イーストウッドアイルランド系か疑惑にまた拍車がかかった。


  • きょうのホンホン

カンバセイション・ピース』(保坂和志


ついに保坂、『残響』のつづきをつづけるってなすげえ本。
いまんとこ芥川賞は1回よりやれないことになってるのは
保坂がこんな本書くからってのもちょっとはあんだろ、まじめにってくらいな。



メモ
どんだけおもしろくても寝だめしていっても
スクリーンでの溝口映画でつねに寝てしまう状態と同じか↓

「沢井さんって、学校行ってた頃から、
あたしが答えわからなくても
クラスの誰かがわかるんだからいいじゃんって思ってたって、
知ってました?」

「子供の頃から綾子が抱いていた、
自分が答えをわからなくても他の誰かがわかっているからいいんだという考えが、
世界との関わりについて何らかの真実を示唆しているように私は感じはじめていた」

カンバセイション・ピース』より

*1:前回日記を参照……してもわからんな

*2:「童貞のケツなんか見たかねえや」と言うべきか一瞬迷ってやめた。が、あんまおねいさんをなめんじゃないよ

*3:なんか、どうも太宰先生がおおいね今回

*4:この鬼な街については前回日記参照で確実に

*5:以上、ネオレアレスモで西部劇である以上必要かと思ってとってつけてみた交互アップのシーン終わり

*6:なんかの間違いで『ミリオンダラー・ベイビー』をみたお知り合いの人がいれば、リングサイドのテーブルで試合後にイーストウッドが着ているジャージの上がほんとにフレぺなんかであったかどうかを思い出してみてください

*7:「小間物屋」=げろのことです。マイライフ初出は満月ポンをひとふくろあけて夜中にトイレに顔をつけて座りこんだわしをみた亡き祖母でした。キャラモリさんとのガールトーク中にこの表現を出したんですがはじめて聞いたとおっしゃられてました。同じ意味の慣用句に「犬を悦ばす(犬悦する)」というのもあるようです。本でいちばん困るのは辞書でさがすのがめんどくさいこういうので、よく使うのは下記http://www.geocities.jp/tomomi965/index2.html

*8:映画愛で